1,大学生自衛官


 時はバブル全盛期。今とは正反対の超売り手市場。職はいくらでもあったし、待遇も良かったころ。自衛隊など行きたがる奴はいなかった。
自衛隊は定員割れしており、地連(人探し)のおっさんは職安や町で若者に声をかけまくっていた。
『ニイチャン! ええ体しとるな。自衛隊行かへんか?まあ、飯でも食いに行こうや。』

 当時僕は大学生。極真空手に燃えていた。試合に勝つには基礎体力が必要だと考えた僕の目に道端にはってあった自衛隊のポスターがとびこんできた。
『自衛隊かー。体力つきそうやなあ。』
そんなことを考えていると側にハガキがあるのに気づいた。名前、住所、電話番号を記入しポストに入れてしまう。
次の日さっそく電話がかかってくる。
『自衛隊に興味あるの?一度見に行ってみない?』
30分後には入隊テストを受けていた。ほかに6人ほどいた。変な奴らばっかりだ。
試験官がテストの説明をする。
『制限時間60分。質問があれば手をあげてください。こっそり答おしえますから。』

 テストの内容は算数、国語、社会など。足し算から漢字の読みまである。すごいレベルだ。
みんな真剣だ。両手を使って計算している奴もいる。
隣の奴が手をあげる。
『2番がわかれへんー。』
すると試験管
『うーん、これは(ギュウニュウ)って読むんじゃないかなー』
そいつはほとんど教えてもらっていた。こういう人達に日本を守ってもらうんやねー。

 テストが終わる。僕が一番はやかった。あたりまえか。大学生やし。
すぐ合格発表がある。といっても全員受かるんだけどね。
『オカノ君、君合格だよ。おめでとう。これで君も自衛官だよ。ちなみに98点だよ。すごいねー。頭いいんだねー。』
あほか、バカにしとんか。しかし、98点ちゅうことは1問まちがってんなー。何間違ったんやろ。
あんな問題間違う俺もかなりバカやなあと思う。

 こんなかんじで1週間後には自衛隊へ入隊することになった。

国旗に敬礼!