11、ファームでの訓練 その3 へ 13、ケピ・マルシェ NO1 へ
12,楽しみ  

     
 日本での楽しみ、趣味はキャンプだった。
自然の中で寝泊りして、飯食って、仲間とわいわい酒飲んで・・・
外人部隊では酒、だいたいビールだった。
訓練で山の中、森の中で野宿して、コンバット・レーション食って、同期と唯一の楽しみであるビール飲んで。
やったやん!お前の趣味が仕事やん!
みんなこう言った。
簡単に訓練内容説明したらそうかもしれんけどな。
もうちょっと詳しく話すと、
フル装備で行軍に出発する。
私のマメのレベルはトップクラスだったのでいつも教官が頭のスイッチを切る手振りして、
『オカノ、スイッチを切れ、何も考えるな。痛みを感じるな。』
みたいなことを言う。
そんなもんゆーたって痛いもんは痛いんじゃー、お前俺の足どんななっとるか知ってるやろ。
いつもまともに歩いてないやろ!と思うが従うしかない。
歩かなければならない。
だから僕も手振りを真似して頭の回路のスイッチを切る。
頭の中をカラッポにする。
ここで警察の同期は『もともとカラッポやろが!』と思うだろう。
お・お・き・な・お・せ・わ!

 T氏の本に『行軍の際は何か楽しいことを考えながらやるんだー、例えば訓練後の一杯のビールとか・・・』
と書いてあったのでその通にする。
実際野宿する際はたいがいキャンプファイヤーみたいに火を囲み、みんなで歌をうたいビールを飲む。
一度それぞれの国の歌をうたうことになった。
みんななにやら自国の歌をうたっている。
僕はここはイッパツ得意な歌で日本の歌のレベルの高さをわからせとかんとあかんと思ったので当時気に入ってたのをうたう。
完璧におぼえていたやつだ。
今は解散してしてしまったスピードの『Wake Me Up!』だ。
 『何だかパッとしない毎日・・・』
とやるやつだ。

 警察学校時代に毎日この曲朝からでかい音で聴いてた。
まわりの部屋から苦情がきたが聴き続けた。
みんなこの曲覚えてしまった。俺のおかげや!
調子にのって町の飲み屋でこの曲歌ったらだいぶ退かれた。寒かった。

 えーと、それで、そう。ビール。
外人部隊ではクローネンブルグかハイネケンが多かった。
クローネンブルグはぬるくても飲めてよかった。日本ではいまだ見てない。
ホットワインがあるときもあった。あれはうまい!
ファームでの唯一の楽しみがこのときの酒だった。

 しかーし、全てはシェフ(小隊長)の気まぐれ一変する。右がナンドー ペルー人 マルシェ(行軍)の途中の休憩の際撮影
ある行軍で一泊することになった。火を囲んで酒を飲む。
シェフが歌を教えてやると機嫌よく言う。
『ボーワラ ボヮラ ディ ボーン フロマージェ・・・・』
もちろんなんのこっちゃわからん。
1回歌ったところで、『よし覚えたやろ、歌え!』と言う。
そんなあほな。もちろんみんな歌えない。
『よし、もう一回うとたる。』と言ってうたう。
そんなもん2回聴いても一緒や。
そしたら急に不機嫌になり、そばの丘を指さし
『頂上までダッシュしてそこから歌え!俺に聞こえる様にな!』
みたいなことを言う。
みんなある程度酒入ってるから結構つらい。
教官に追い立てられるように丘を駆け登る。
そして教官『お前ら大声で歌えよ!』と言う。
歌詞がわからんと言うと『そんなんどーでもええねん!とにかくでたらめでええから歌え!、同じフレーズばかりでええから!』
と言う。『これが外人部隊のやり方なんやー!』と訴えるように言う。
我々は理解し、むちゃくちゃな歌を大声で歌う。
OKでたのでダッシュで降りていく。
そしてシェフの前で歌う。
また丘登る。
2〜3回やらされた。もうフラフラ。

 それも終わり寝ることに。
テントなんかない。
ブルーシートとひもでテント?を作る。
寝る前にいつもどおり足の手入れをしていつでも出発できるようにしておく。あたりまえになっていた。
その日はなぜかガードの割り当てがなかった。
なんでやろ、他のグループがやってるのか?おかしいな。と思ったがまーいいかと思ってしまった。
消灯の合図で寝にはいる。
うとうとし始めた頃突然『起床ー!出発!』ときた。
やっぱりな、何かあると思ってたがこういうことか。と思いながら大慌てで撤収する。
真っ暗な山の中を行軍再開だ。

 本能というのは何かわからん空気を感じとれるのかもしれない。
何かおかしいと思ったら何かあった。
すごいぜ本能!俺は一生お前に従うぜ!!


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