バスで何時間だろうか、全然覚えてない。けど、なんせ1RECに無事到着した。
そして部屋に案内される。
全員同じ中隊に連れて来られたが、配属されたのではなく1RECでの新兵教育のためだ。
第5中隊に仮配属となり1週間の新兵教育を受ける。
駐屯地案内から始まり、RECの歴史、使用武器、車両等の説明を受ける。
1RECの主任務は偵察だ。
VBL(軽装甲車)、AMX10RC(6輪軽戦車)をメインに各種車両使用しての任務につく。
私はあまりこういった戦車や装甲車には興味はなく、自分の体をフルに使う歩兵部隊に行きたかったのだが。
VBLはホンマに小さい装甲車で、小回りが効き、また、川なども渡ることができる。
ケツにプロペラがついていて、それで水上を進むことができるのだ。
しかし、装甲は薄く7,62ミリの攻撃までしか耐えられない。
12,7ミリに撃たれたら終わりなのだ。
このVBL、私の最初の愛車になるのだった。
VBLには多く種類があり、7,62ミリ機関銃をつけたもの、12,7ミリをつけたもの、指揮車タイプのもの等いろいろある。
私は12,7ミリつきの機関銃手として乗っていた。
演習などで街中を行くときなどサンルーフから顔を出すような感じで顔を出すと景色がよく見え楽しかった。
町の人がよく手を振ってくれ、私は機関銃をグルグルとまわしてそれにこたえたものだった。
あとで上官に「いらんことするな!」と叱られたりしたけどね。
10RCはキャタピラではなく、6輪タイヤの戦車だ。
主武装は105ミリ砲、副武装に7,62ミリが2つ。
乗員は4人、車長、運転手、砲手、装填手だ。
私の2番目の愛車で、この車での私の役目はは弾薬の装填だった。
装甲ははっきりいって薄く、増加装甲を施して12,7ミリの攻撃に耐えれる程度だ。
しかし、戦車の癖に時速90キロも出るので、逃げ足は速い。
ま、90キロも出てたら攻撃されても当たらんやろう。90キロも戦場で出せるんか知らんけど。
マニアックな説明はこれくらいにしとこう。
新兵教育で一番イヤだったのが歌の練習だった。
1RECの歌を覚えさせられたのだが、1時間で全部覚えろという。
4番まであるのだが、もちろんフランス語なので何のことか意味などわからない。
ほんまに呪文みたいや。
意味がわかったらまだなんぼか覚えやすかったと思うのだが。
1日の教育を終え仮住まいの部屋へ帰る。
私は東欧出身のマティンと同じ部屋になった。
そこはフランス人伍長と韓国人二等兵がいてる部屋で、我々二人が居候させてもらう形になる。
その部屋、やたらアジアちっくで、香がたかれ、刀が壁に飾られてあり、空手やらテコンドウなんかの道着が干されている。
写真が壁に貼られている、フランス人伍長が空手着を着てポーズをとっているやつだ。
夜になるとフランス人伍長、空手着に着替えはじめる。
何をするのかとみていると、ロウソクを取り出した。
ん?何をするんだ?
火をつける。
そしてさらに何かを取り出そうとしている。
ロウソクとくれば・・・
そう、ヌンチャック!
というか、よーわからんがとにかく見ていることにする。
横に居たマティン、「何しとんや、あいつ?」
俺にもわからない。とにかく様子を見ていることにする。
すると伍長、ヌンチャックを振り回し始めた。
火をつけたロウソクの前で。何か意味があるんか?
ロウソクの火でもヌンチャックで消すのかと思って見ているがそんな気配はない。
マティンがしきりに俺に訊いてくる。
「なんでロウソクに火をつけたんだ?なんでロウソクの前でヌンチャック振り回してるんだ?なんで・・・」
知るか!そんなもん!!
ヌンチャックを終えると今度は突き蹴りを始める。
マティンが「オカノも空手やるんやろ?」
と訊いてくる。そやで、俺も日本では空手やってたでと答える。
伍長、今度は型らしきものの練習を始める。
マティン、「あんなんもオカノはやってたんか」と訊いてくるのでそうだと答える。
今度は伍長、ロウソクの火に向かって突き蹴りを始めた。
火の手前で突いた手を止めてフーッ!とかハァー!!とか言ってる。
マティン、「あんなんもしてたんか?」
やるかっ!と答える。
誰がこんな練習教えたんや、どうせ何かの雑誌に載ってたんだろう。
フランスのこの手の雑誌、つまり格闘技関係の雑誌にはあることないこと書かれてるからな。
まるでいまだに日本には忍者や侍がいるようなことが書かれている。
表紙はいつも兜をかぶったり、忍者のかっこうをした外人だった。
と、まーこんな感じで1週間が過ぎていった。
そして本配属となり、私はモリスとともにそのまま第5中隊に配属となった。
そして偶然にも同じ第4小隊となり私の脱走までモリスとともに第4中隊で生活していくこととなる。
モリスにはいろいろ世話になった。よくプレステもさせてもらったしな。
脱走まであと8ヶ月!
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