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31,極真空手オカノ道場(生徒は二人)


 押忍!極真空手オカノ道場師範、オカノ サザキです。
これから私の道場についてお話しようと思います。
 
 まず、きっかけは、同じ中隊のブラジル人の「ダ・シルバ」と話をしたことだった。
奴は一等兵だったが、ある日の午前、ダ・シルバと話をしているうちに極真の茶帯を持ってることが分かった。
練習してるんか?と聞くと、「駐屯地の敷地内に柔道場があるからそこでできるでー」とのことだったので、さっそく今日からやろうということになった。
その夜、ダ・シルバの部屋に誘いに行くといない。
同じ小隊の奴に奴はどこに行ったのか?と聞くと、
「今日の午後、脱走した。」
との返事。
まじで〜!『昨日の今日』という言葉は聞いたことがあるが、『今日の今日』なんか聞いたことないぞーと思う。
にしても、約束した日に脱走するなよ〜。

 このように出鼻をくじかれたのだが、仕方がないので一人で柔道場に行くことにする。
そこにはすでに何人かの人間がおり、練習してた。
練習といっても柔道の練習している奴など一人もおらず、キックボクシング、テコンドウなどの練習だった。
サンドバックがあったので、一人でもなんぼか練習できたね。
その話をルーマニア人のロッカにすると、俺もやりたい!教えてくれ!!と言うので弟子にしてやることにした。
ふふふ、弟子入りやで〜、弟子入り。
弟子のロッカは毎日練習にやってくる。なかなか熱心な奴だったオカノ道場での練習風景
そのうち自称ドイツ人のピレリーも来るようになった。
ま、こいつはあんまり来なかったけど。
ロッカはガチンコが好きで、スパーリングをよくやった。
経験がない割にはなかなか強かったな。

 ある時、道場破りがやってきた。
オカノ道場設立以来初めての他流試合だ。
相手はどこかのヨーロッパの国の奴で、空手をやっており、黒帯も持っていた。
「俺はオキナワまで修行に行ったことがあるんだ。ちょっと組み手をしてみないか。」
との挑戦に、オカノ最高師範の返事はもちろん「ええで〜」。
ということで試合が始まった。
相手はどこかの寸止め空手をやってたらしい。
やたら上段回し蹴りを放ってくる。
しかし、全然当たらんよ〜。
相手が蹴った直後に接近してパンチを腹に叩き込もうとすると、奴は「マテ、マテ」と言って勝手に中断してしまう。
なんや、お前審判もかねとるんかい?とか思いながらも待ってやる。
やはり、最高師範たるもの思いやりよ、思いやり。
しかし、何度も同じように「マテ、マテ」と言って中断させるので、ちょっと腹が立ってきた。
お前、自分が都合悪なったら待てかい?
弟子のロッカの手前もあるし、これははっきりさせたらなあかんと思ったので、奴のレバーにぶちこんだったら「ハウッ」とか言ってしゃがみこんでしまった。
軽くやったつもりやねんけどな。
これでわかったやろうと思っていたら、「ここの畳は悪い。隙間が空いてて危ないから今日はこのへんにしよう!」とか言ってる。
何ゆうとんねん!お前の負けやろが!!とか思いながらも私は最高師範、そういうことでいいやと終わりにする。
う〜ん、さすがに師範、思いやりやね。
思いやりか?ちょっとちゃうやろ。

 しばらくしてテコンドウ使いがやってきた。
同じ中隊のリムという韓国人一等兵。
いっつもキムチ臭かった。
そう、例のちょっと変わったフランス人伍長(従軍記28を参照されたい)にあやしげな武道を教えていた奴だ。
こいつがロウソクの稽古を教えたのかどうかは知らないが、テコンドウを教えていたのは間違いない。
こいつもちょっと組み手をやろうと言う。
さすがによく足が上がる、体も柔らかい。
後ろ回し蹴りなんかもバンバン出る。
しかし、当たらない。
ま、私が当たらない距離を保っていたからなんだけど。
これも上で書いた空手マンの時と同じく、蹴った直後に近づいたら何もようせんかったな。
そのうち相手、疲れてきとったね。
もうやめよか〜と言ってきた。
こいつも何人か弟子?を持っており、たまに練習に何人かで来ていた。
サンドバックとか叩いているが、なんか撫ぜているようにしか見えなかった。
実際、「俺はどれだけサンドバックを叩いても決して疲れない!」
とか言ってなんやら教えてたけど、疲れへんかったら練習にならんやろが、それにそんな叩き方やったらそら疲れんやろ!と思わずつっこみ入れそうになったね。
韓国人、すぐにむきになるからやめといたけど。
と、こんな感じでオカノ道場での鍛錬は続くのだった。
あ、上で書いた空手マン、以後全然来なくなったな、そういえば。


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