ノエルは外人部隊では２番目に大きな祭りだ。
１番は４月末にあるキャメロン。
これは本当に大騒ぎだね。
２番目のノエルも大騒ぎだ。
１２月にはいるとどこの中隊もこれの準備にとりかかる。
訓練なんかそっちのけでやる。
朝から晩までやる。

　ノエル、結局はクリスマスをフランス語で言っただけのことなんだが、イエス　キリストの誕生日であることには間違いがない。
だから、それに関してのお祝いをする。
まず、各小隊がクレッシュ(だったかな？)と呼ばれる作品を出展する。
これは、まあジオラマみたいなものだ。
クリスマスか外人部隊に関係したクレッシュを作り、その優劣を小隊単位で競う。
我々の小隊はこの年の３位に選ばれた。
ま、苦労したからな。
しかし、これがなかなかすごいんやねー。
凝ってるとこはとことんやりよるからな。
見た目は普通の街のジオラマなんだけど、ブラックライトなんかを使ってて、明かり消したら雪国になるようなんとか。
この説明ではよくわからんと思う。
こればっかりは、実物見ないとわからんわな。

　我々が作ったのはキャメロンの模型。
キャメロンとは、昔外人部隊がメキシコで敵兵２０００人とたった６０名程度で全滅するまで戦った土地の名前だったかな。
栄誉なこととして毎年祭りをしているんだが。
良く覚えてないが。
右の写真の屋根瓦、あれって俺が粘土から作ってんでー！
板の上に粘土置いて伸ばして、ストーブで乾かして、一個一個接着剤でつけていったんやねー。
相棒はモリスやったな。
二人でずーっと屋根作ったり、クレッシュ用の木を中庭の植木から引き抜いてきたり・・・
最初はちょこちょこ生えてる草とかを引き抜いてたんだけど、面倒くさくなったきたので植木を丸ごと引き抜きだしたんやね。
これは命令で植木引き抜いてきたんやねー。
なんでもありやからな、外人部隊。
これ、引き抜いてたら見つかってしまったんだけどな。
「おい、お前ら、何をしてるんや？おお、こら！」みたいな感じ。
うわー、見つかった、軍曹やでー、だいぶやばい！とか思ってたら、
「こっちにもっとええのがあるぞー」って教えてくれたな、あの軍曹。
うん、実にいい軍曹だったね、彼は。

　昼間はそんなジオラマなんかを見て回って、夜は中隊ごとの晩餐会。
これも各小隊ごとに劇なんかの出し物をする。
だいたい、上官のものまねをするのが多かったな。
そして、中隊長からクリスマスプレゼントを貰う。
一人一人手渡しでな。
迷彩の背嚢と中隊のマークのはいったジッポライターやったんかな。
そして、それが終わるといよいよ本番に突入！
駐屯地全体が巨大な飲屋に変わるのだ。
各小隊で作ったバーが開店し、一晩中飲み続けるのだった。
といっても、いつの間にかくたばってたけどな、俺は。
気づいたら制服のままベッドでくたばってたな。
そのとき覚えたポンチというカクテル、美味かったな。
ワインと砂糖とフルーツのラム漬けを混ぜたものなのかな。
あれはめちゃ美味かった。