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35,営倉入り 1


 営巣入りとなった。
要するに牢屋にぶちこまれたということだ。
禁止事項を破ったからだ。
どんな?
携帯電話の所持、外出時の私服着用、外出先の虚偽申告などかな、しょうもないね。
 
 まず、当時オランジュの連隊では、携帯電話の所持は禁止されていた。文章とは関係なし。ある演習での一コマ。
といっても、多くの兵が持っていたのだが。
だから、私も購入しようと思ったのだ。
当時、日本に電話をかけるのに、町中で普通に売られているテレカを使うと、12分で2000円かかったのだ。
パリに上ったときに日本の本屋で売られていた、2000円で90分話せるというテレカを使ったりもしたが、何せ金がかかった。
そこで、携帯電話を購入して、その携帯に日本から電話をかけてもらおうと考えたのだ。

 ある週末、私はリヨンに行こうと考えていた、パリの南にある町だ。
週末ぐらいは部隊を離れてのんびりしたいと思っていたのと、ついでに携帯を購入しようと思ったのとで。
しかし、外出時は制服着用が義務づけられていたのだが、これがまたうっとうしい。
外出時にはアイロンがあてられているか、汚れはついてないかなどの検査があった。
もし、外出中に汚れたりしたら、クリーニングに出さなければならないし、どのみちアイロンをあてて、しわをとる必要があったので、あまり着たくなかったのだ。
それに、汚れるのが心配で、くつろげなかったからね。
そこで、現地では私服を着てウロウロしようと考え、これも持って出かけていた。

 で、週末、制服を着て、私服などが入ったカバンを持って私は部隊の門を出て、鉄道の駅に向かった。
その途中、なぜだか知らないが、いきなりマルセイユに行こうと思ったのだ。
予定変更、行き先はマルセイユ、フランスの南にある港町だ。
リュックベッソンの映画「タクシー」の舞台だったかな、たしか。
ビデオの表紙がマルセイユの坂だったと思う。
マルセイユに着き、まず宿を探す。
制服姿は目立ち、タクシーの運転手などから声をかけられる。
宿を見つけ、私服に着替えてウロウロする。
でも、第一目的は携帯購入ということで、店を探し、日本で言う「プリケー」を買う。
けっこうええ値段したかな。
とにかくまず日本にかける。
無事つながり、携帯電話を買ったから、今度からこちらにかけてくれるように頼む。
よかったよかった、これで電話に金がかからなくなる。
ただでさえ少ない給料なのにね。
日本円で約10万円程度。
でも、基本的に衣食住がタダなので、生活に困ることはないのだが。
映画などを見て、宿ではバスタブに湯を張って、酒を飲みながらテレビを見る。
最高やねー!
部隊ではシャワーしかないからね、湯船につかるのなんて何ヶ月ぶりだろうか。

 というわけで楽しい週末も終わり、部隊に戻ることにする。
土日の両方がマルマル休みになるのは、一月に一回程度だったので、みんなこの日をすごい楽しみにしている。
月曜からの用意もあるので、夕方までに帰ろうと思い昼の4時頃に部隊に着いた。
衛兵に敬礼をして門をくぐる。
と、そこにPM(ミリタリーポリス)が立っている。
そして、私を認めるとこっちに来いと手招きしている。
げっ、やばい!
私のカバンには私服やら、携帯やらが入っていて、異様に大きくふくらんでいたのだが、それが目についたのだろう。

 PMの部屋に連れて行かれ、持ち物検査が始まった。
あかん、かなりやばい!
カバンを逆さまにされて、荷物をぶちまけられる。
はい、終わり。
私服が見つかり、携帯も見つかりました。
行き先申告書を提示させられ、その切符を見せろと言う。
そんなものは捨てて無いというも、なぜか切符が出てきてしまう。
アホな俺は切符をカバンに入れていたのだ、捨てておけばいいものを。
いつもは捨てるのだがね、こんな時に限って持ってるし。
だいたい、こんなもの置いてたって何の役にも立たないのだがね。
一応、これらのモノは俺のやない!とか言ってしらを切ろうとするが、通じるわけがない。
こんなもん、誰が見たってわかるっちゅうねん!
PMにさんざん罵倒され、携帯は没収されてやっと解放された。
処分は後日、所属中隊で決められるらしい。
せっかく買った携帯も、一瞬使っただけで没収されてしまったし、どんな罰が待っているのかとブルーな気持ちで迎えた日曜の夜だった。
まじで最悪ー!


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