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37,営倉入り 3
 で、スキーの話。
どこへ行ったのかはわからないのだが、南フランスであることは確かだろう。
地名は忘れてしまったというか、最初から知らない。
東欧の人間は、スキーの経験者がけっこういてたのだが、アフリカの人間は、経験者が少なかった。
ま、それは、あたりまえかな。
ちなみにモリスも滑れなかったのかな。
一日中、ビール飲んでたんと違うかな?
民間人もいてるんだけど、平日ということもあってか少なかったな。
ま、あんまり大きなスキー場でもなかったから。

 最初は誰かと一緒に滑っていたような気がするが、途中から一人で滑っていたな。
ビールやらデスペラードやらを入れたリュック担いで滑ってたんだけどね。
酒飲みながらのスキーというのもなかなか良かったな。
ちなみにデスペラードというのは、テキーラベースのお酒なんだが、瓶入りで売ってたんやね、フランスでは。
日本でも売っているんだろうけど、あんまり見ないな。
で、滑っているとたまに同じ小隊の人間に会う。
そんで、ちょっとま一緒に滑ってからまた別れるという感じかな。
一番よく一緒に滑ったのは、サージャン・シェフ(軍曹長)のポールかな。バズーカと。 右がバズーカ、こいつの名前ね。
彼は、マダガスカル人なのだが、普通に滑っていたな。
何回目なんですか?と聞くと、まだ2回目くらいとか言っていた。
すごい上達が早い人だった。
ま、頭も良かったからな。かなりまともな人間だったな。
まともな人間探すのが難しいんだな、外人部隊。
で、そのシェフ・ポールとは結構長い時間一緒に滑っていたな。
やたら、「オカノは上手だ、上手だ」とか言ってくれた。
別に俺は、そんなに上手ではないんだが、あまりにも周りの人間が下手くそなんで、そう見えたのだろう。
実際、滑らんと酒飲んでた奴、半分くらいいるんと違うかな。
で、そこでちょっと変わったリフトを見つけたというかあった。
普通、日本ではリフトといえば、椅子がついていてそれに座って上まで運んでもらうんだが、そこで見つけたリフトには椅子がなかった。
では、どうやって運ばれるのかというと、椅子の代わりに紐と棒みたいのがついていて、その棒をまたにはさんでスキーで滑りながら上まで運んでもらうというもの。
水上スキーみたいな感じで、斜面を滑りながら登っていくのだ。
だから、途中でスキーのエッジが立ってしまったりしてこけたりすると、その場に置いてけぼりにされてしまう。
実際私も、そういう目にあった。
そういう時は、仕方がないのでそこから滑り降りる。
このリフトは、疲れるからあまり好きではないな。
こんな感じで、1週間弱くらいいてたのかな。
牢屋にどれくらい入れられるのかなとかビビリながらね。
ひょっとしたら、忘れてるんとちがうかなーとか、甘い考えもしたりしながら。
でも、人に聞いたら、絶対間違いなく牢屋に入れられるから、心配するな!とか言われるし。
そんなん考えたら、またテンション下がっていく。
好きにせんかい、ボケーとか思ったりもする。
で、夜になったらまた酒飲む。
ベッドでゴロゴロする。
酒浸りやな、外人部隊は。


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