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39,営倉入り 5
 営倉にいてる人間、いろんな理由でぶちこまれている。
ある伍長は、国に残してきた奥さんに会うために脱走して、1ヶ月ほど過ごした後、また部隊に帰ってきてぶちこまれたのだと言っていた。
すごくまともそうな伍長だったな。彼はたしかルーマニア人だったと思うのだが。
私は個人的にルーマニア人が好きだな。
同期に気の合うルーマニア人がいたからかもしれないが。
同期にルーマニア人は3人いたけど、全員と仲良かったな。
まともだったからかな。
3人のうち、二人が同じ部隊に配属となった。
ロッカとダラボイナ。
そういえば、ロッカも後に営倉にぶちこまれていたな。
なんでも、夜中にガードについていて、駐屯地内を見回っていた時に雨が降ってきて、仕方がないのでトラックか何かの中で雨宿りしていたら、それを軍曹に見つかって営倉送りになったらしい。運が悪いやつだ。
にしても、その軍曹も、それくらいで営倉入りさせるなんて、小さい小さいな。
欠礼しただけで、めちゃくちゃ怒り狂うやつもいてるからな。
ま、欠礼する方も問題やけどな。
まだ俺がカステルにいた時にも欠礼が原因でえらい怒られたことがあった。
当時あほのポーランド人バナッシュにバスケットしている時に捻挫させられたのだが、そのおかげで松葉杖をつくはめになった。
それで、リハビリというか、マッサージしてもらいに医務室に行く際にある小隊とすれちがったのだが、その際俺は松葉杖をついているし面倒くさかったので軍曹に敬礼しなかったんだな。
そしたら、めちゃくちゃ怒りよった。
最初何言ってるんかわからんかったんだが、その小隊にゴトウ君が偶然いてたんやね。
そんで、俺はゴトウ君にこの軍曹、何怒ってるの?と聞いたわけ。
そしたら、「お前が敬礼せんから怒り狂ってる」と言うわけよ。
え?まじで?というわけで、あわてて敬礼したのを覚えている。

 で、また営倉の話。
前にも書いたが、営倉に入れられたおかげでガード24につかなくてよくなったのだが、ガードの待機室の掃除も営倉に入れられた兵士がすることになっているので、当然私も掃除に行く。
で、そこに掃除に行くと、同じ中隊の知った顔がいる。
俺の顔を見た一人が、「ヘイ、オカノ、もう営倉にぶちこまれたのか。ブラボー、ブラボー!やるな、お前!!」とか言っておちょくってくる。
だまれ、ボケ!とか言い返しながら、そんな奴はほっといてせっせと掃除をする。
確かに、着任してほんの数ヶ月でぶち込まれている。
しかし、何か腹立つので、こいつらの食料でも食ってもたろかーとか考えたりもするが、アホなことはやめておこうと考え直す。
ちなみに、こいつらガードの飯を取りに行くのも俺らの仕事なんやね。
食堂まで、荷車を引っ張っていってガードについている人間の飯をもらってくる。
そのために何人かで食堂に行って飯をもらった帰りやったかな、一緒に行った何人かのうちの一人がいきなり飯の入った入れ物をもう一人に投げつけた。
なんかえらい怒っている。喧嘩らしい。
投げつけられた方は、「冗談、冗談」とか言っているけど、怒っている方は殴りかかる。
この怒っている奴、例のマダガスカル人。
あわてて止めに入る元警察官のオカノ2等兵。しかし当時は囚人。
まてまて、落ち着け落ち着け!やめろ!!とか言いながら間に入る元警官。
このときは、自分が警官だった頃のことを思い出してしまったな。
しょっちゅうこんなことしてたなー。
別に喧嘩なんか止める必要ないのに、警官やから喧嘩を見てしまった以上は止めに入らないといけない。
ええやんけ、喧嘩ぐらい。こいつらエネルギー有り余っとるんやから、させとったらええねん、喧嘩ぐらい。
喧嘩程度で110番してくるしな。
そんなもん、ほっとけ!ボケー!!
それで、止めに入った俺らにだいたい奴らは矛先を向けるんやな、絶対手を出してこないとわかっているから、言いたい放題や。
などと、現職の頃を思い出しながら二人の囚人兵をなだめるオカノ囚人兵だった。
もちろん、投げつけられた入れ物に入っていた飯は、ひっくり返っていたけどな。
でも、たいしたことはなかったはず。別にクレームがついたりした覚えはないので。
ま、どうせ、奴らは飯が食えたらそれでいいわけよ。

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