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41,訓練1 
 外人部隊、よく訓練したな。
いちいち演習場などには行かない。そこらへんの町や村でやった。
ま、私が所属してた1RECが田舎町にあったので、町と行ってもたいした規模ではなかったのだが。
訓練内容は、RECが偵察部隊だったので、当然そのような内容になる。
6輪戦車(10RC)、4輪装甲車(VBL)で敵を探しに行き、待ち伏せをしたりする。
敵役はジープが多かったが、敵役がない時もあった。
敵役がいる場合は、地図で敵が現れそうな地点を予想し、そこで待ち伏せしたりした。
毎回、ミーティングをし、地図を広げてなんやかんやみんなで言っているのだが、俺には全然わからなかった。
「オカノ、理解できたか?」などと聞かれるが、細かいところまでわかるはずもない。
要するに、敵を探して、待ち伏せして撃退するのだなということはわかったいたけどね。

 ある日の訓練中、俺はVBLの12,7ミリ機関銃手として装甲車の上に備え付けられた機関銃手用のハッチから顔を出していた。
どこの町かわからないが、訓練で移動していた。
すでに訓練が始まっていたのかどうかもわからなかったのだが、とにかく移動していた。
町を歩くフランス市民がこちらに向かって手を振ってくれる。
こんなこと自衛隊時代にはありえなかったことなので、異様に嬉しい。
ありがとうみんな、俺に手を振ってくれて。君たちの税金で我々は生活しているんだよ、ありがとう。君たちの税金で、うちのモリスはプレイステーションを買っていたよ。うちのハピピは、マリファナを仕入れていたよ。脱走した自称カナダ人は、エロ本を30冊くらい買っていたよ。
と、町中で渋滞にはまってしまう。
なんでこんなところで渋滞なんだと思いながら進んでいくと、渋滞の先頭にはうちの戦車が。
あなたが原因でしたか小隊長。
小隊長、後ろの渋滞などどうでもいいような感じで、戦車から身を乗り出してなにやら指示を出している。
周りを見回すと、すぐそばにもう一台戦車がいる。もちろん同じ小隊の10RCだ。VBLの内部 マダガスカル人運転手
すでに訓練は始まっていたようだ。
しかし、フランス人、訓練には慣れっこなのか文句一つ言わないで待っている。
ただ単に俺が言葉を理解できなかっただけかもしれないが、怒っている人はいなかったように思う。
自衛隊がこんなことしたら、何を言われるかわからない。

 さらに訓練は続く。
無線で各車両と連絡を取り合いながら村に入っていく。
我々のVBLは、細い路地を進んでいくが、ほんまに細い。
こんなところで路地から人が飛び出してきたらと思うと怖くなる。
と、VBLがUターンを始めた。
軍用車両なので、窓も小さく視界も悪い。おまけに運転手もマダガスカル人の下手そうな奴。
心配だったので、上のハッチから身を乗り出して後ろを見る。
周りは民家の壁が並ぶ。
あーっと言うまもなく、壁に激突、もちろん壁が壊れる。
おーい、壁にぶつかったぞ、壊れたぞーと伝えるも、「知らん、大丈夫、大丈夫」などと言っている。
何が大丈夫やねん、現に壊れてたやんけーとか思いながら、まあええかと思ってしまう。
ええかげんやなあ、外人部隊。

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