45，マイイー演習　3

２月末のフランス北部の夜、寒いです、なかなか寒いです。 氷が張るくらいだから、零度にはなっているのでしょう。 　しかし、ほんまに何もないんやねー、この演習場。 演習場によっては、バーや売店があったりするのだが、マイイー演習場の場合は、ほんまに何もなかった。 あるモノと言えば、即席で作ったバーだけ。 バーと呼べる代物ではなかったが、ビールとサンドイッチ、チョコレートなどが買えたので、一応バーということにする。 といっても、スーパーなどでビール、チョコレートなどを買ってきて、それを売っていただけの話だが。 部隊内では、「フォアイエ」と呼んでいたのだが、例によって意味は知らない。 何もない建物内に、椅子やら机を並べて、オランジュから持ってきたテレビを置いているだけの話。 そこで、部隊では資機材の管理をやっている自称インド人のカポラル・シェフ（上級伍長？伍長と軍曹の間の階級）がバーテン兼コックをしている。 といっても冷蔵庫のビールを出し、バケット（フランスパン）にウインナーを挟んだだけのサンドイッチで、調理らしい調理は、一切していないのだが。 その横で、誰か二等兵が手伝いをさせられている。 で、支払いなのだが、驚くことにこの店、ツケがきくのだ。 というか、ツケしかなかったのだが。 みんな、演習行くのにそんなにお金持ってきてなかったから、仕方がなかったのだろう。 演習から帰った後の駐屯地で、しっかりと徴収されたけどね、やっぱ。 　で、この寒い演習場で、一番私が腹が立つことなのだが、それは冷水シャワー。 異常に腹が立つ。 我々が寝泊まりするテントから、シャワー室までは、結構離れていた。 夜中に寒い中、真っ暗の演習場をシャワー室に向かって歩いていく。 やっと到着したシャワー室で服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びようとする。 このときの気持ち、「やっと暖まれる〜」という感じだ。 それが、見事に裏切られるのだ！ シャワーの取っ手をひねると、出てくるのは冷水！！ どう思う？ 日本では普通、あり得ないな。 それがしょっちゅうやったからね、外人部隊。 ま、この頃には、温水が出るかどうか、確認してからシャワーを浴びるようになっていたけど。 それでも、よく裏切られた。 温水が出ることを確認してから浴びていても、途中から冷水に変わるんやねー、腹立つことに。 体中石けんだらけの時に、冷水に変わられたら悲惨ね。 泡だらけのままでいるわけにもいかないから、強引に冷水で泡を流す。 最高に腹立つ！！！ 自分の前に入っていた奴に、「ちゃんと湯が出たか？」と聞くのだが、その答も信用できない。 「ちゃんと湯が出たで〜」と言いながら、顔が笑っている。 それで浴びると、案の定冷水が出てくる。 悲鳴をあげるね、マジで。 帰国してすでに５年は経つが、いまだに、シャワーから冷水が出てくると、ブチギレそうになるね。 自分がガスのスイッチを入れ忘れているのが原因なのだが。 　無事？シャワーも浴びて、くそテントで寝ることに。 ジャージにフリース着て、寝袋も支給された官品と自分で買った私物とを重ねたもので寝るのだが、寒くて寝れない。 ほんまに寒い！ 寝たかなと思ったら、目が覚める。 もちろん寒さで目が覚めるのだ。 それで、朝起きてびっくり。 前の晩にテント内の自分のベッドの上につるして干していた濡れタオルが凍っているのだ！！ テントの中でも零度以下になっているのである。 そら、寒さで目が覚めるで〜。 ところが、これ以上の恐怖を、演習中に味わうことになるのだった〜