6、研修 へ  8、卒業 へ
7,体力勝負


 警察官、頭ばっかりでは職務遂行することはできない。
腕力は絶対必要である。正義には力が絶対必要である。
正義があるからこそ力も正しい方に使われるのである。
悪者に銃を持たしたら危険であるということであり、正しいことをいくら主張してもしばかれ、殺されてしまったら無であるということだ。

 警察の力の象徴に機動隊がある。
知ってのとおり体力勝負の職場である。自衛隊なんかよりはるかに厳しい訓練を行っている部隊だ。
警察学校でもある程度の訓練は受ける。
警備実施と呼ばれるものだ。
機動隊で実際に使用されている盾やヘルメット、出動靴(コンバットブーツ)等を使用して行われる。
主にやるのがヘルメット、盾、出動靴を着用しての駆け足だ。
見た目にはたいしたことないように見えるかもしれないが、これが長時間の駆け足になるとけっこうきつい。
盾はジェラルミン製で約4キログラム。
これを片脇に挟むように持って走るのだが、だんだん握力がなくなってくる。
4キロがけっこうきつい。
機動隊では8キロの盾で走ったりもするのだが。
これを最終的には100分間走り続けることになる。
ほとんどのものが嫌がった訓練だった。
中には平気な奴もいた。長距離走が得意な奴は楽勝だったらしい。
最初のころの訓練は30分くらいだったが、だんだん時間が伸びていく。
そして、100分になる。
私も長距離走が苦手だったので非常に苦しいものとなった。

 駆け足は2列縦隊で掛け声を出しながらのものとなるが、その掛け声、順番に出さなければならない。
前から順番にまわってくる。
最初のころは体力も残っているから何の問題もないが、体力がなくなってくると声をだすのもけっこうきつい。
呼吸が乱れるのだ。
乱れるとそれがそのまま走るペースに影響してくる。
号令に足を合わせて走らなければならないが、これもけっこう体力を消耗する。
そして100分走、教官の号令で始まった。
教官のペースに自分をうまくのせるのが重要だと思った。
30分経過。
早くも脱落していくものが出てきた。
どないするねん、まだ半分も走ってないぞ。
まだ多くの者が体力に余裕があるのか脱落しそうなやつの盾を順番に持ってやってる。
しかし、10分もすると盾なしで走っているにもかかわらず隊のペースについてこれなくなってきた。
周りのものが押してやったり引っ張ってやったりしてやるが結局は脱落していった。
一時間経過。
この時点で半分の人間がいなくなっている。
盾を持ってやる方の人間の体力も余裕がなくなってきているのであまり長い時間持てない。
そういう俺もこのころにはかなり体力を消耗していた。
隣で脱落しそうな奴がいてる。
盾を持ってやる。はっきりいってあまり持ってやりたくない。
そんなことをしていれば自分もやがては脱落していくのがわかるからだ。
4キロの盾、2枚持って走るのはきつい。
足が重い。
息が苦しい。
トラック一周、約300メートル。
盾2枚持ちは一周が限界だった。
一周走ったところで盾を持ち主に返す。
しかたがない、無理だ。こっちが脱落してしまう。
そのうち自分も隊のペースについていけなくなってきた。
ちょっとずつ遅れてくる。
「おらー、何やっとるんじゃー!そんなんで市民を守れるんかー!!」
教官に耳元でどなられる。
一瞬は遅れを取り戻し、自分が走っていた位置に戻るがまたすぐ遅れてくる。
盾やヘルメットを指揮棒でガンガンたたかれ体をこづかれる。
もうこうなったらついて行くのは無理だ。
足が動かない。視界も極端に狭くなる。
周りが見えなくなってくる。
誰かが盾をとろうとしてくる。持ってやると言っているのだろう。
が、そんなことをされたら恥だ。なんとしても自力で完走しなければ。
こんなかんじで100分が経過した。
なんとか走りきった。というか最後の方はほとんど歩いているのに近かったらしい。
なんちゅう情けない体だ!
こんなんでは実戦で通用しない。
持久力を上げねば。
というわけで持久力を鍛える決心をしたのだった。
そしてこの決心が後の外人部隊志願入隊に大きく影響することになる。


6、研修 へ  8、卒業 へ