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8,卒業


 というわけで6ヶ月にわたる初任科教育を終え、警察署に配属となる。
配属先は希望どおり最も忙しい署の一つと言われる警察署となり、勤務する交番となった。
飲み屋街を受け持ち区域にもっており、週末の夜は大忙しだった。
商店街野中にあったので、昼間でも十分忙しかったけどね。
 昼間は道案内に落し物処理。観光地が近くにあったので観光客も多かった。
万引き多かったね。
近くにダイエーがあり、よく万引きを捕まえたから来てくれと電話があった。
現場に行くと50過ぎのおっちゃんがしょんぼりと警備室のイスに座っている。
何を盗ったのかと思えば『缶詰』とか、『するめ』とか。
家に電話して連れて帰ってもらう。
店のほうも代金さえ払ってもらえれば被害届けは出さないというのでお金払って帰っていく。
めちゃかっこ悪いでー。
缶詰なんか盗るなっちゅうねん。
 あと、近くに『無印良品』もあってそこからの通報も多い。
そこでは高校生がいつも捕まっている。女子高生。
我々が行くと、「お金払ったらええんやろー」
とか言っている。
なめとんかー!おまえがやったのは窃盗ちゅう立派な犯罪じゃー!!
と怒鳴りたいところだが、経験豊富な上司がお父さんのように話をする。
女子高生がいきなり泣き出す。
「親には言わないでー・・・」

 あるとき110通報で『路上で喧嘩』ときた。
現場に行くとなにやらもめている。
どちらもヨゴレっぽい。数字で書くと450だ。
自称極道が露店を出していた男をシバいていた。
ショバ代払え!とか言っていたと思う。
露店の男は口や鼻から血を流している。
傷害の現行犯やね。
現行犯人とは『現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とする。』とある。
その極道、破門になってたんやけどね。
そんでシノギなかったみたいね。
悲惨や・・・

 そして、バイクに乗った凶悪犯を追跡することもあった。
交番の前は商店街。歩行者天国で自動車、バイクは乗り入れできない。
にもかかわらずバイクで入ってくる奴もいる。
注意すれば大体のやつが降りるが中には逃げる奴もいる。
なんという悪いやつだ。信じられない!アンビリーバブル!!
そんな奴には正義の鉄拳が炸裂する。
そいつは400ccバイクに乗っていた。
私がそいつを見つけて止めようとするとよけて逃げていく。
そうはさせるか!
俺の俊足がうなる!
約30メートルのデッドヒートのすえ凶悪犯人を捕まえることができた。
われながらよく捕まえれたなーと思った。
本部長賞もんやね、ほんま。
交番のみんなも「よー追いついたなー」と褒めてくれた。
デッドヒート?ははは・・・

 週末の夜は大忙し。
飲み屋街は人であふれている。
酒飲んでみんな気が大きくなっているから喧嘩が絶えない。
通報で現場に行く。喧嘩現場だ。
男が血まみれで倒れている。
そのそばで2〜3人がなにやらもめている。
「シバくぞーこらーうらーやってみーおら〜kご@ぺsふぉl」
もうみんな興奮して手に負えない。あばれまくっとる。
とにかく双方引き離して事情を聞く。
「俺のツレがあいつにどつかれたんじゃー、はなせーこらっ!ポリー!!」
もう大変や!
現場から離れた場所に連れて行く。
腕をつかんで連れて行く。
といきなり振り返って「俺のツレがどつかれたんじゃー!」
とかいいながらまた現場に戻って行く。
俺はというとそいつの動きによって地面にひっくり返っている。
しかし腕はつかんだままなのでそのまま引きずられていく。
その日は雨で地面が濡れていたのと、支給された靴の底がツルツルだったのとでひっくり返ってしまったのだ。
めちゃかっこ悪い。ズボンには穴は開くし、ひざは痛いし。
ま、すぐ起き上がってそいつを壁に押し付けて押さえこんだんやけど。
いやー、酔っ払い、どんな動きするかわからんでー。
それにごっつい力出しよるでー。
結局その日は徹夜で事件の処理することになった。
たいへんでっせー警察官。


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