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20,カステルでの生活


 ファームでの訓練を終え、新兵訓練の残り3ヶ月はカステルノダリの第4連隊で過ごすことになる。
ここは建物もしっかりしてるしちゃんとした食堂もあるし売店もある。
最初のころはめちゃ嬉しかったんやけどすぐどうでもよくなったね。
結局ほとんど自由ないし、売店やらあっても行けんかったし、相変わらず休日なんてなかったしな。
でも、毎週土曜か日曜には2〜3時間だけ自由時間がもらえ、売店行ったり、電話したりできたので嬉しかった。
この2〜3時間を待ち望む気持ち、日本に住んでたら、普通に生活してたらまずわからないだろうね。
いいね、自由って!
 で、その2〜3時間何をするのかといえば、まず売店に行って食料、テーピング、バンドエイド、靴下、下着、洗剤、テレホンカード、ノート等必要なものを買い込む。
それから電話。10台程食堂の出入り口にあったがほとんど誰かが使っている。他の建物へさがしに行ったりして日本にかける。
電話かけるのも大変だ。
12分で約2000円。12分でカード1枚なくなる。
いつもフランスの現地時間で1400時頃かけてたから日本では2200時ごろになるかな。ちょうどええ時間や。
 それがすんでレストラン・バーみたいなとこに行く。酒が大好き外人部隊!
たいがいみんなそこで酒飲んでた。
ビール最高!
この時間が一番嬉しかった。
自由、なんて素敵なんだ!
この数時間が我々にとって最も貴重な時間だった。
この後にはまたロクでもないことが待っているんだけどね。
 
 日曜は映画を見ることができた、といってもビデオやねんけどね。
一室に集まってカポラルが借りてきたビデオを見る。
いっつも戦争アクションものだったけどね。
恋愛もんなんかないな、やっぱり。あってもこわいね、あそこで誰と恋愛するねん。

 訓練面では実弾射撃、水泳等が加わった。
対化学兵器訓練はファームにいる時からやっていた。
二人ペアーになってやる。すばやくマスク、科学防護服を着る。
着た後すぐお互いチェックしあう。
そして脱いだ後顔やマスクに白い粉末状の解毒剤?を塗りまくる。
これもまたあとかたずけがうっとおしかったけどね。

 射撃は室内射撃場でやった。200メートル射撃。
射撃位置のすぐ右横にモニターがあり着弾位置が見れるようになっている。
それを見ながら調節していく。
200メートル先に兵士がこちらを狙っている絵の的があり、それを狙う。
なんせ的に当たれば良かった。
脚を使用(小銃に2本の脚がついており、それを使うと狙い易い)しての射撃だったのでかなり楽に当てることができた。といってもかなり的は小さかった。
的の大きさは人と同じ位なのだが200メートル離れるとほとんどアリンコぐらいにしか見えなかった。

 水泳は楽しかった。もともと得意だったしほとんど遊びに近かった。
プールには6メートルくらいの高さの飛び込み台があった。強制的に跳ばされる。
喜んで跳ぶ奴もいれば嫌がる奴もいる。
胸で十字を切ってから跳びこむ奴もいた。なんか祈ってる奴もいてる。
けっこう笑えた。
 一度立ち泳ぎしながら宣誓文(CODE D’HONNEUR DU LEGIONNAIRE)を言わされたことがあった。
プールの中で整列させられた。水深は3メートルくらいはあったのでもちろん足は届かない。
水泳得意な奴はいいけど泳げない奴なんか悲惨だ。実際泳げない奴がいた。
立ち泳ぎしながら大声でみんなで読み上げる。泳げない奴は必死で手足を動かしている。
隣の奴につかまろうとしてる奴もいる。
隣と距離をあけていないととても危険だ。水面下での闘いが始まる。
水しぶきが顔にかかる。水を飲んでしまう。それでも叫び続ける。
この命令を出したのは小隊長のシェフだからな。機嫌が悪いと何をさせられるかわからん。
いっつもむちゃしよる。ダボがー!
誰かが溺れたようだ、カポラルが飛び込んで助けていた。
ほんま、俺らええおもちゃやった。
あいつはいっつも口をへの字に曲げとったな。ちゅうかそういう顔なんかな?
 
 奴は2emREP(第2外人パラシュート連隊)出身だ。通称レップ。
ここの出身者は無茶をする奴が多かった。
外人部隊にあるパラシュート部隊で、世界的にもかなり有名だ。
最初は皆この部隊を希望するがこうやって内情がわかってくるとどんどん希望者が減ってくる。
めちゃをするので有名な部隊だ。
あそこへ行くと頭がいかれるというウワサがたっていた。
俺はもうその時には既にレップには行きたくないと思ってたね。
にしても溺れる奴を間近で見たのは初めてだった。こいつもフランス人。
できそこないのフランス人が多かったな、外人部隊。


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