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12,刑事研修3

 刑事研修、基本的にはやることがない。
というか、やることは死ぬほどあるのだが、やり方を知らないのだ。
だからここで過去のいろんな資料、先輩刑事から基本的な資料の作成方法などを学んでいく。
課のロッカーには、過去に事件処理した資料が山ほどあるので、各資料が、どのような書き方で作成されているのかを学んで、それを自分なりのやり方に変えていく。

また、事件処理の際にどのような資料を作成しなければならないのか等も、この研修で学び取らなければならない。
そして、膨大な資料の中から、自分に合った書き方を見つけ、それを資料作成の見本として自分用に残しておけば、後々大変役に立つことになる。
よく先輩刑事から、「ここで自分用に手に入れた資料は、将来お前の宝になるぞ」と言われたのを思い出す。
実際、私は常に携帯している小さなメモ帳に、逮捕した際などに作成する資料の見本を書き写したりしていたが、それは交番勤務に戻った際、本当に役に立ったのを覚えている。
このメモ帳を見ながら資料を作成するのだ。この方法で資料作成している先輩が何人かいたのを覚えている。
事件処理するとなると、みんなバタバタになるのでイチイチ作成方法を聞いている時間はない。このバタバタしている時に、何か資料を作成できる、できないでは雲泥の差があるのだ。
新人でも資料が作成できる人もいれば、巡査部長になってもろくに資料作成ができない人もいる。
バタバタ時に何ができるかで、その人の評価が決まると言っても過言ではないだろう。
でも、いつまでもメモ帳見ないと報告書が書けないようでは、ちょっと問題だが。

話を研修に戻そう。
強姦事件の後は、傷害事件。
当時流行っていたダイヤルQ2が関係した事件。
いまや、ダイヤルQ2を知らない方もおられると思うのでここで簡単に説明しておこう。
これは、0990で始まる番号にかけると、いろいろな業者が提供する情報を聞くことができるものだが、中には今で言う出会い系サイトみたいなものもあった。
というか、当時Q2と言えば出会い系を指していたと言える。
電話で見知らぬ人間と話をすることができ、気が合えば直接会ったりすることもできるというもの。
が、このQ2、電話代が異常に高い!10分で1000円くらいはかかったように記憶している。
高額の電話料を払って女性と会う約束を取り付けてウキウキで待ち合わせ場所に行き、永遠その女性が現れるのを待ったが結局現れなかったという話を当時はよく聞いた。
私自身も当然その経験はある。赤いBMWのオープンカーで現れるはずの金持ち女性を、いやらしい事を想像しながら5時間ほど待ったように記憶している。
二人で昼食を食べる予定が、一人自宅で夕食を食べることになった。まあ、ほろ苦い思い出である。

で、それにどう絡んでいるのかと言えば、被害男性がQ2である女性と知り合い、直接会うことになったらしい。
で、待ち合わせ場所に行ったところその女性の男であったのか、友人であったのかは忘れたが、とにかく待ち伏せされていて因縁つけられて暴行を受け、金品を盗られたというもの。
よくあるパターンやね、美人局(ツツモタセ)みたいなものやな。
で、被害者と共に被害現場に行き実況見聞をする。
何故か私は被疑者役。
つまり被害者を殴る男の役だ。
例のごとく首から「被疑者」と書かれた札をかけ、被害者に暴行を加える様子を再現する。
そして、写真を撮っていく。
どのように犯行が行われたのかを再現していくのだ。
第三者がそれらの報告書を見ても、犯行の状況が目に浮かぶようにしなければならない。
先輩刑事から、流石に空手をやっているだけあって、腰が入った殴り方をするなと褒められた?ことを覚えている。
これらの書類の出来具合が被疑者の刑を左右する。
と、あまり知ったような口をきくのはこれくらいにしておこう。次は、生活安全課の研修かな。

 


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