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13,ケピ・マルシェ 1

   
 前ページの続きを少しだけ。
結局真っ暗な中を行軍し、午前4時くらいに施設に戻った。
それから寝れるのかと思えばそのまま食堂に直行し、テーブルセッティングしてFA-MASの手入れ。もう最悪!
2時間くらいしてサージャン(軍曹)が見に来る。
銃口覗いて放り投げ、「あと2時間!」とだけ言い残しどっかへ消える。
そんで2時間経ってまた来る。
ちょっと部品さわって「汚れとるからまた2時間!」と告げどこかへ。
そんで2時間後「はい、あと2時間」てなかんじ。
このころにはどんなアホでもこれがプログラムなんだということがわかる。
みんなあきらめている。
そらそうや、どんながんばっても絶対OKでない。
そんな中、サージャンやってきたついでに暇つぶし。フィッシャーの手に掃除用のベンジンかける。
何をするのかと思えばいきなりライターで火をつけた。
勢いよく燃え上がるフィッシャーの手!振り回して消そうとするが消えへん。
ポケットにつっこんでようやく消えた。
あとで奴の手みたら火傷で水ぶくれいっぱいできてた。ちょっとかわいそうやった。
それにしても信じられんことする。これが外人部隊なのか。かなりいかれた奴多そうやと思う。
日本の自衛隊でこんなんやったら大問題や。裁判起こされるで。
結局8時間ほどやったのかな手入れ。手入れしながら寝たわ、ほんま。

 それから5日くらいしてファームを去る日が来た。カステルに戻るのだ!
それは同時に我々が正式に外人部隊兵となることを意味していた。
それまでは「志願兵オカノ」だったが、それ以降は「レジョネア オカノ」となる。
外人部隊のトレードマークの白い帽子「ケピ・ブラン」(写真の白い帽子)を与えられ、晴れて外人部隊の一員となることができるのだ。
一泊二日、60キロメートルの行軍の後カステルノダリでケピの授与式がありレジョネアになれる。
いつも通3個班に分かれ行軍出発だ。
11キロのサッカドー、FA-MAS、その他装備。いつも通だ。唯一違うのは、くそファームから脱出できること。

 あいかわらずマメが痛い。2時間位歩いた時点で遅れる奴がでてきた。
ポーランド人のバナッシュ。奴は本物のアホだ。当時28歳だと言っていたが、成人してからのほとんどを刑務所で暮らしていたらしい。
何しでかしたんや?と訊くと、バナッシュは少し考え「人を刺した」と答えた。
まじで!こいつが!!というような奴だ。
後で他の奴に聞いたら「ちゃうちゃう、酒飲んでヘベレケになってナイフで脅して金盗りよったんや」というはなし。
同じこと2回もしたらしい。
そのバナッシュ、マメが痛いとぐずりだした。もう歩きたくないと言っている。子供か!
フィッシャーに「みんな痛いんや、お前だけやない。オカノなんかめっちゃマメようさんあるのにちゃんと歩いとるやろ!」と言われてる。
おお、さすがターミネーター!6メートルの高さから落ちてちーと頭良くなったか。たまにはええこと言いよる。
しかしこのフィッシャー、チョコレート大好きでしょっちゅう人にチョコもってないか訊いて回ってた。
「オカノ、チョコあるか?」ケピ授与式後 右上がバナッシュ 左下フィッシャー 右上2番目が大佐
あるけどなんやねん?
「くれ!」
あほか、なんでやねん!
てなかんじ。
そのうちみんなフィッシャーにチョコ見せびらかし、「ほら、フィッシャー、チョコやでー!欲しいか?やらん!」
てな感じ。意地悪したった。俺もやったな。今考えると子供の世界やでほんま。

 そんな感じでのバナッシュ、後でしっかりオチつけよった。それはまた今度。
こいつは最後までアホ丸出しやった。脱走兵1号もこいつやったし。ある意味俺の先輩になるのかな?  


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