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14,ケピ・マルシェ 2

   
 朝6時頃出発し、12時頃に休憩に入った。
山道の脇の林の中にむりやり入っていって休憩する。
この時もやっぱりガードをつける。
常に誰かが警戒しているようにする。30分交代でやった。
他の者は昼飯を食べ昼寝する。夜はあまり寝れないので今のうちに寝ておく。
我々が潜んでいる林の横を何も知らない民間人が楽しそうにおしゃべりしながら通り過ぎていく。

 3時頃出発する。
歩いているといきなりみんな何かに群がり口に入れている。
何かを食べてるようだ。
おい、何してんねん?何食ってるねん?と訊くと、
『チェリーや、知らんのかオカノ?』と言う。
チェリーぐらい知ってるけど、木になってるのは初めてやと言うと
『ほら食え。うまいぞ、ビタミンがいっぱいやぞ。』
と言って一ふさくれた。
食ってみると確かにうまい。なんか感動した。
その他にも野いちごみたいなものも教えてくれた。
外人はよく知ってる。ちゅうか、いかに日本人が自然と触れ合ってないかがよくわかる。
それ以降は俺もチェリーに群がることになった。
注意して歩いていると所々に生えている。
なかなか楽しいぞ。野いちごは手が真っ黒になる。色がつく。でもうまい。
外人はやることがけっこう大胆だ。チェリーの木みつけて枝ごと持っていこうとする。
枝バキバキ折りよるからな。おこられとった。
よく見たら人の家の庭から生えていた。
まあええやろ、君らフランス人のために働いてるねんからと思うことにした。

 なんやかんやでしだいに辺りが暗くなってくる。
にしてもトラクターが通った後のタイヤの跡がバッチリ残ったデコボコ道ほど腹立つものはない。
マメがいっぱいできた足で歩くには辛すぎる。
ほんまトラクター恨むわ!ぼけ!

 何時間くらい歩いたのだろうか。ひたすら歩き続ける。
あいかわらずマメが痛い。ほんま痛い。
 突然後ろの方にいたフィッシャーがサージャンを呼ぶ。
『アンガジ ボロンテール フィッシャー アブゾー サージャン ・・・・・バナッシュ・・・・・・・』
何言ってるのかわからんかったけど、あほのバナッシュがどうかしたらしい。
歩くのをやめ、みんなバナッシュのところへ集まる。
そこには放心状態のバナッシュがいた。
鼻水、よだれを垂れ流して突っ立っている。目は焦点が合っていない。どこ見てるのかわからない。
敵か!?
そんなことは思わない。
サージャンが『どうした、バナッシュ?』と訊いても返事がない。
まじか!こんなん見たん初めてや!
サージャン、『名前は?』と訊く。
『・・・・・・バナッ・・シュ・・・』
とつぶやくように答える。
緊急事態ということで、しばらく行軍中止。
バナッシュはトラックに乗せられることになる。
トラックが来るまでその場で休憩!
でかした!バナッシュ!!よくやった!!!
バナッシュのサッカドー、装備を外させ道端に寝かせる。
サージャンが『バナッシュ、もうおまえは歩かんでもええ、ここからトラックに乗っていくんや。』みたいなことを言っている。
俺らも口々にほめてやる。いやーバナッシュ君、君はえらい!ほんまよくやった!
みんな道端に座り、サッカドーにもたれて休憩する。
星がむっちゃよく見える。すごい星の数だ。めちゃくちゃきれい。
これらの同じ星が日本からでも見えるんやなーと思ったりする。
おお、なんて俺ってロマンチストなんや!詩でも作ったろかなとか思う。行軍
チョコレートを食べる。
隣の奴と話をする。
ルーマニア人のロッカと話す。
こいつは後に俺が師範をすることになる極真空手オカノ道場の第一号内弟子となる男だ。(生徒は3人)
奴はよく自分の夢を語ってくれた。
『俺はフランス国籍とって、家買って、女を呼び寄せて結婚するんや。』
これがロッカの口癖だった。
そんで俺に近くに住めとか言っていた。
ロッカ、ほんまに8ヵ月後くらいにルーマニアに家買いよった。
一週間の休暇が出たとき国に戻って家買ってきたらしい。
日本円にして40万円位らしい。

 こんなかんじでケピ・マルシェは続く。
いっつもやけど、目的地とか全然わからんままひたすら歩くのってすごく辛い。
地図見せてくれるけど、そんなん見ても全然わからんかった。
いやー、ほんまいつまで歩くの?ってかんじだった。
そんで後どのくらい歩くのか訊いてもいっつも答えは30分くらいだった。
ま、ええか!


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